天然氷を製造できる氷室は、現在全国に5軒しか残っておらず、そのうち3軒が栃木県日光市にあります。氷池に沢の岩清水を引き込み、寒波の訪れから約2週間ほどゆっくり時間をかけて約15cm の厚みにしていきます。
昔から製法や貯蔵法は変わらず、1年分の氷を氷室で蓄えています。現在、飲食店の業務用として使われることが多い透明な氷は、アイスケースに原水を入れマイナス12度にしたブライン漕に入れ、48時間かけてつくられる機械氷で、135 kg の角氷です。氷彫刻用の氷は、この氷を使用しています。
装飾品としての純氷
宴会時にひときわ映える氷の彫刻や、冬の雪まつり会場の氷像、さらに料理を引き立たせる氷の器など、氷は見た目の美しさを備え持っている素材です。どこまでも透き通った、溶けにくい硬い氷である事、さらには、水ももちろん食品ですから、保健所で認可された氷でなければなりません、様々なことが要求されます。その条件を唯一充たしているのが純氷です。
皆様もご存じのことと思いますが、簡単に『純氷の作り方』をご説明したいと思います。
1. 純氷の水
良い氷を作るには、水がとても重要です。もちろん食品ですから保健所で認可された水、多くの製氷工場では、水道水を使用していますが、自然水を使用している工場もあるそうです。
自然水と水道水の違いは、消毒のために次亜塩素酸ナトリウム(塩素)が使用されているかどうかの違いと思います。しかし水を飲めるようにするためには、大量の塩素を使用します。
そこで、製氷工場では水道水をろ過することから始まります。活性炭ろ過・イオン交換膜・逆浸透膜法などの純水装置も駆使し、徹底的に塩素及び不純物を除去していきます。
2. 製 氷
大きな水槽に、『ブライン』という溶液を入れ、濃度によって冷やす温度を調整できます。
ブラインの中にアイス缶を沈め、缶の中に塩素・不純物を取り除いた水を注入し、エアーパイプを入れ、大量の空気を送り込み、氷缶の水を勢いよく撹拌・対流させ氷と水の境目に排出された、空気をこの対流の勢いではがしとるのです。さらに純度を上げるために、中心部の水(わずかにでも残る不純物)を吸い上げて破棄し、新しい原水を入れて製氷します。これを何回か繰り返して氷を作ります、業界では芯替えとも言いますが回数が多いほど透明な氷ができます。
FAQ
Q.芯なし氷(透明氷)は作れませんか?
A.製氷時間と手間(芯替えの回数)さえかければ、作れないことはありません。生産性の問題。横管式であれば、できる製氷機はあります。
Q.氷は何故この大きさですか。(高さ100cm・幅55cm・奥行25cm・重さ135kg)
A.日本の製氷技術は明治時代にイギリスから導入されたもので、アイス缶の大きさも300ポンド(135kg・36貫目)になっています。 (JIS規格)
Q.1本氷が出来るのにどれくらいの時間がかかる?
A.現在の氷管の大きさでは、品質・生産性などいろいろの面から48時間から72時間がベスト。
Q.氷が直射日光に当たると、白くぼろぼろになるのは何故?
A.太陽の光・赤外線などの熱戦を浴びると、結晶と結晶の結合部が劣化し、六角の柱状のスジとなって氷の透明度が落ち、結晶の結合部が簡単にはがれてくる。
Q.彫刻した氷の作品は展示してどの位もつか?
A.屋内での展示でしたら、3~4時間は充分にもちます。野外の場合は、気温・風・作品の大きさ、などによって左右されやすく、設置場所状況に応じた対策が必要です。何といっても氷彫刻の魅力の一つは溶けていく過程にあると思います。